セカンドキャリア⑧
いつまで働く 70歳定年?
70歳定年?「70歳就業法」を学ぶ
いったい俺はいつまで働くのか?
少し立ち止まってこの先のセカンドライフ・セカンドキャリアの事を考えてみてください。
この先、企業は70歳までの雇用確保にむけて「70歳定年制」や「定年制の廃止」などの制度を導入して、皆さんにもっと働いてもらう環境を整備していきます。
60歳とか65歳で惜しまれつつ、花束を抱いて大手を振って退職の花道を歩もうとしていた方には、お気の毒な現実で、「サラリーマン生涯40年」どころか、この先は「サラリーマン人生一筋50年」人生の半世紀を会社の為に捧げて頂くことになりつつあります。
老後は悠々自適のセカンドライフを理想として働いてきた中高年齢者層の方々には、
冷たい現実とまだまだ続く仕事と、「ホッ」とする日々がいつになるのか見えない将来が訪れようとしています。
これまでのサラリーマン人生は終身雇用制に守られていたが、既に終身雇用は崩壊しているといわれ、日本社会のサラリーマン象も大きく変わってきています。
終身雇用は企業が右肩上がりに成長している時代のものとして、近年は日本経済の長期的な低迷が続き、企業の成長力は衰え競争力が失われる中で、終身雇用の年功序列や賃金体系では企業自体の継続維持が危ぶまれることになります。
グローバル化の波やデジタル進化・AI導入などに対応できる、優秀な若い人材の確保が必要となります。
一方でこれまで企業を支えてくれた高齢化人材も、働かないおじさんと揶揄されないように豊富な経験と高いスキルをいかして働き続けて、存在価値を高めていくことで引き続き企業に貢献することが求められていきます。
高齢者雇用法の導入により、企業側には高齢者の雇用に対する制度施行と、企業競争力につながる優秀な人材確保に向けた取り組みなど、それぞれの課題対策も必要となります。
70歳就業法とは
2021年4月から「70歳就業法」といわれる「高年齢者雇用安定法」の一部が改正され、
企業側は70歳まで働き続けることが出来る仕組みをつくる努力義務が課せられることになります。
これまでは2013年4月改正の「高年齢者雇用安定法」により、それまで一般的だった60歳の定年退職年齢が廃止され、
企業側は2025年までに従業員の雇用を65歳まで確保する措置を導入することが義務付されていて、2020年時点で概ね98%の企業が導入を済ませていました。
更に、この法律を強化する目的で、上記の2021年4月から「70歳就業法」の努力義務が施行されることになりました。
そもそも『高齢者雇用安定法』とは、
“『高齢者雇用安定法』とは、1971年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」として「高年齢者の安定した雇用の確保の促進」、「高年齢者等の再就職の促進」、「高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進」、「経済及び社会の発展に寄与する」ことを
目的にとして制定された法律です。”
参考: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
70歳就業法の選択肢
「70歳就業法」の制度では、皆さんの働く選択肢が増えます。
① 70歳までの定年延長
② 定年制の廃止
③ 70歳まで継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(子会社・関連会社での継続雇用を含む)
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
個人とのフリーランス契約への資金提供
個人の起業支援
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
個人のボランティアなど社会貢献活動参加への資金提供
2021年4月からは70歳まで働ける環境を整備することが企業の努力義務となりました。
① ~ ③は、これまで65歳としていた就業機会を5年延ばして70歳までとなります。
④ ⑤は新たに、多様な働き方を選択できるよう新設した制度です。
フリーランスや起業、ボランティアなど社会貢献活動など、企業側の雇用以外での就業機会が増えることとなります。
制度導入による企業のメリット
制度導入による①②③の雇用を維持するケースで、企業側のメリットとしては、
1)会社業務を理解している即戦力の人材確保が継続できる
2)高いスキルや専門分野のノウハウ・技術力が継承できる
3)若手や後継人材のスキルアップや育成につながる
生産年齢人口は年々減少し労働力の確保が難しくなる中で、会社の仕組みや業務を深く理解している即戦力の人材を随時継続的に維持することができ、雇用計画や採用計画が立てやすくなる。
若手や後継人材の育成を通じて、継承する技術や知的財産など会社の生産性に欠かせないノウハウなどが、着実に次世代に継承することで企業発展とともに、企業文化や伝統の積み重ねも期待が出来る。
また人材の育成が進むことにより、会社の経営資源の生産性の向上や生産効率・経営効率にもつながる。
以下の3つは雇用の維持はしないが支援をするケースです(制度④⑤のケース)
1)フリーランス・起業支援をすることで業務関係を継続し、仕事の関連性を効果的に活用できる
2)ニッチな分野や個人の起業規模として柔軟でスピード感のある事業支援が容易になる
3)社会貢献の個人支援が進むことで、企業として社会貢献活動への関りが太くなる
これまでの業務経験を活かして、フリーランスや起業することで、
企業側も元従業員として、仕事の依頼内容もその業務経験者など仕事理解度が高いことで、意思の疎通が容易であり効率的効果的な仕事依頼が可能になる。
フリーランス・起業支援に必要な資金も利用頻度や効果次第では投資効率が高くなり、
雇用継続に伴う人件費等経費比較において効果的になることも期待できます。
個人の起業だからできる仕事の職種や内容、仕事の量や規模感もありニッチな仕事の部分を、個人の起業家としてスタートが出来たら、その後の拡大要素が相互に期待が持てる。
企業として社会貢献活動への関りは企業の責務として、企業OBが活動参加することで社会貢献活動への理解もより深まり、企業イメージアップの一躍も担うことが出来る。
制度導入による企業のデメリット
一方で企業のデメリットもあります。
70歳まで雇用を維持することは、従業員数の増加と人件費拡大は避けられなくなります。また年功序列型の賃金体系も弊害となり改定が必要になるなど、人件費の増大は企業経営に与える影響力が大きいといえます。
ベテラン従業員の定着により、組織内の流動化が鈍り若手人材の台頭の場が失われる。
中高齢者の人員数によっては新規採用の減少や、若手社員の離職リスクも懸念されます。
高齢者の場合、健康面のリスクや体力面の低下を考慮して、安全配慮義務に沿った就労管理が必要になります。また突然の勤務困難になる業務停滞のリスク回避にも備え、
定期的な健康診断や予防措置を実施するなど、健康チェック体制を設ける必要がある。
高齢者が働くメリット
高齢者が働くの「メリット」と「デメリット」をまとめてみました。
高齢者雇用に関する意識調査(対象1000名複数回答)から、
「60歳以降も働きたいと思う人」にその理由を尋ねた調査結果よりまとめてみました。
1) 収入を得ることが出来る
調査結果の1位が「生活の糧を得るため」77%でした。
生活の糧となる「収入を得る」目的も人それぞれにあるようです。
・生活費を稼ぐ
・老後資金をためる
・厚生年金 社会保障など不足分を補う
・ローンの返済のため
・家族子育て費用を得る
・趣味や余暇活動に使う
2)健康維持が出来る
調査結果の2位「健康を維持する為」46%でした。
・健康診断が定期的に実施できる
・働くことで生活のリズムが一定する
・働くことで意欲が増す、心の健康維持できる
・医療費の削減になる
3)生活の質を高める
調査結果の3位「生活の質を高めるため」33% となっています。
・お気に入りの物を買う
・自己投資をする
・趣味や余暇を楽しむ
・人付き合いに活かす
4)働くことに生きがいを感じる
調査結果の4位「働くことに生きがいを感じている為」33%
・仕事が好きで働けることが喜び
・スキルを活かせる
・キャリアアップや自分が成長出来る
・周りからの信頼が得られる
5)人とのつながりをつくる
働くことで、会社や組織内で、仕事の得意先や同業仲間など、人とのつながりを保つことで、高齢化による孤立を防ぐことにもつながる。
・気心知れた仲間の存在を長く継続できる
・ちょっと一杯など、気分転換の時間が共有できる
・趣味や共通の話題をとおして楽しめる
6) 時間を有効に活かせる
「仕事を辞めてもやることがない」と時間を持て余し、家でぶらぶらしていることから体調を崩してしますこともあります。
・働くことで時間を有効に使って稼ぐことが出来る
・家でぶらぶら・だらだらしなくてもいい
・何もしない時間より、働くことで時間サイクルが早い
・お金目的ではない、意義のある働きたも出来る
高齢者が働くデメリット
働くことの「メリット」ばかりではないので、当然「デメリット」もあります。
しかし、「デメリット」を理解して、そのように陥らないように意識し準備することで、
リスクを減らすことで、生き生きと働いて人生プランを実りあるものにしていきましょう。
1)働く意欲・モチベーションが維持できない
雇用延長の10年間は、一般に給料も半分くらいまで下がります。
高齢社員になってもこれまでの仕事ぶりやスキルがなくなるわけではないことから、
決して若手社員には負けない自負があっても、会社からの期待値も小さくなります。
雇用延長の立場を理解できず、働く意欲やモチベーションを維持することが難しくなると、働き続けることが困難になってしまします。
2)健康面の不安や体力の衰え
高齢社員は体力や筋力・記憶力・判断力など、健康面において様々なリスクが増えていきます。
常に自ら体調管理に気を配り、定期的な健康診断を実施する必要があります。
3)デジタル化・ITなど技術革新についていけない
社会のITや技術進歩は目覚ましい発展を続けており、
業務内容によって進化についていけず仕事がスムーズにいかない場合もあります。
働き続けるか、仕事は引退して老後生活をするかは、それぞれの想いで選択肢が分かれてきます。
人生設計(ライフデザイン)やライフプランを描くことで、この先が見えてくると思います。少し立ち止まって、セカンドライフ・セカンドキャリアの事を考える機会にしていただき、皆さんの幸せ人生につながることを願っています。
参考資料 :
厚生労働省 高齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
日本労働組合総連合会「高齢者雇用に関する調査2020」より
日本経済新聞 高齢者雇用に関する記事
パーソルキャリア 70歳定年時代に向けて企業がやっておくべきこと~2020年法改正~
Yu Life plus 70歳就業法働くメリットデメリット
週刊ポスト 定年崩壊の記事
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』